仙台高等裁判所秋田支部 昭和32年(う)35号 判決
記録に編綴の判決書の記載によれば原判決主文は「被告人を懲役一年六月に処する、未決勾留日数中六十日を右刑に算入する」となされておることは所論のとおりであるところ記録並に留置場補助日誌抄本の記載及び当審における証人鍋倉寛治、同今泉忠治、同内藤庸男及び被告人の各供述を綜合すれば原審兼子徹夫裁判官は昭和三十二年三月十四日終結した公判期日に即日被告人に対し判決を宣告しその際「被告人を懲役六月に処する、未決勾留日数中六十日を右刑に算入する旨主文を朗読したことが明白である(尚証人今泉忠治は未決通算を四十日と聞いた旨陳述しておるが前記留置場補助日誌抄本の記載及び証人鍋倉寛治の証言に照らし措信出来ない)。しかして判決は公判廷において宣告により告知せられることによつて効力を生ずるもので原本の記載如何に拘らず被告人に対しては右宣告された判決が効力を有するものであることは多言を要しないのであるから原判決に事実上宣告せられた主文と相違する主文を記載してある以上原審裁判官は有効な裁判書を作成しなかつたことに帰しこの違法は判決の執行を不能ならしめ判決に影響を及ぼすこと明白な訴訟手続上の法令違背を冒しているものというべきであるから原判決は破棄を免れない。各論旨は理由がある。
(裁判長裁判官 松村美佐男 裁判官 大島雷三 裁判官 三浦克己)